Rashomon (1950) / 羅生門

『羅生門』(らしょうもん)は、1950年(昭和25年)8月26日に公開された日本映画である。大映製作・配給。監督は黒澤明、出演は三船敏郎、京マチ子、森雅之、志村喬。モノクロ、スタンダード、88分。

芥川龍之介の短編小説 『藪の中』と『羅生門』を原作に、橋本忍と黒澤が脚色し、黒澤がメガホンを取った。舞台は平安時代の乱世で、ある殺人事件の目撃者や関係者がそれぞれ食い違った証言をする姿をそれぞれの視点から描き、人間のエゴイズムを鋭く追及した。

自然光を生かすためにレフ板を使わず鏡を使ったり、当時はタブーとされてきた太陽に直接カメラを向けるという撮影を行ったり、その画期的な撮影手法でモノクロ映像の美しさを極限に映し出している。撮影は宮川一夫が担当し、黒澤は宮川の撮影を「百点以上」と評価した。音楽は早坂文雄が手がけ、全体的にボレロ調の音楽となっている。

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日本映画として初めてヴェネツィア国際映画祭金獅子賞とアカデミー賞名誉賞を受賞し、黒澤明や日本映画が世界で認知・評価されるきっかけとなった。本作の影響を受けた作品にアラン・レネ監督の『去年マリエンバートで』などがある。

2008年(平成20年)から角川映画、映画芸術科学アカデミー、東京国立近代美術館フィルムセンターの3社によってデジタル復元が行われ、2010年(平成22年)に3社に対して全米映画批評家協会賞の映画遺産賞が贈られた。

Rashomon (1950) / 羅生門のあらすじ

打ち続く戦乱と疫病の流行、天災で人心も乱れて荒れ果てた平安時代の京の都。荒れ果てた羅城門で3人の男たちが雨宿りしていた。そのうちの2人、杣売り(そまうり、焚き木を売る人)(志村喬)と旅法師(千秋実)はある事件の参考人として検非違使から帰りだった。実に奇妙な話を見聞きしたと、もう1人の下人に語り始める。

3日前、薪を取りに山に分け入った杣売りは、侍・金沢武弘(森雅之)の死体を発見し、検非違使に届け出る。そして今日、取り調べの場に出廷した杣売りは、当時の状況を思い出しながら、遺体のそばに市女笠、踏みにじられた侍烏帽子、切られた縄、そして赤地織の守袋が落ちており、そこにあるはずの金沢の太刀、女性用の短刀は見当たらなかったと証言する。また、道中で金沢と会った旅法師も出廷し、金沢は妻の真砂(京マチ子)と一緒に行動していたと証言する。

まず、金沢を殺した下手人として盗賊の多襄丸(三船敏郎)が連行されてくる。多襄丸は、山で侍夫婦を見かけた際に真砂の顔を見て欲情し、金沢を騙して捕縛した上で、真砂を手篭めにしたことを語る。その後、凛とした真砂が殺し合いをし勝った方の妻になると言ったことから、多襄丸は金沢と正々堂々と戦い、激闘の末に金沢を倒したという。ところが、その間に真砂は逃げており、短刀の行方も知らないと証言する。

次に真砂の証言が始まる。手篭めにされた後、多襄丸は金沢を殺さずに逃げたという。真砂は金沢を助けようとするが、眼前で男に身体を許した妻を金沢は軽蔑の目で見ており、その目についに耐えられなくなった真砂は自らを殺すように懇願した。そのまま気絶してしまい目が覚めると、夫には短刀が刺さって死んでおり、自分は後を追って死のうとしたが死ねなかった、と証言した。語り口は悲嘆に暮れ、多襄丸の証言とはあまりにかけ離れていた。

最後に巫女が呼ばれ、金沢の霊を呼び出して証言を得る。金沢の霊曰く、真砂は多襄丸に辱められた後、彼に情を移し、一緒に行く代わりに自分の夫を殺すように求めた。しかし、これに多襄丸が呆れ果て、女を生かすか殺すか夫のお前が決めていいと金沢の縄を解いた。しかし、それを聞いた真砂は逃亡し、多襄丸も姿を消し、一人残された自分は無念のあまり、妻の短刀で自害した。そして自分が死んだ後に何者かが現れ、短刀を引き抜いたが、それは誰かわからないと答える。

それぞれ食い違う三人の言い分を話し終えた杣売りは、下人に「三人とも嘘をついている」と言う。杣売りは実は事件の一部始終を目撃していたが巻き込まれるのを恐れ、黙っていたという。杣売りによれば、多襄丸は強姦の後、真砂に惚れてしまい夫婦となることを懇願したが、彼女は断り金沢の縄を解いた。ところが金沢は辱めを受けた彼女に対し、武士の妻として自害するように迫った。すると真砂は笑いだして男たちの自分勝手な言い分を誹り、金沢と多襄丸を殺し合わせる。戦に慣れない2人はへっぴり腰で無様に斬り合い、ようやく多襄丸が金沢を殺すに至ったが、その間に真砂は逃げていた。

3人の告白は見栄のための虚偽であり、情けない真実を知った旅法師は世を儚む。すると、羅城門の一角でふと赤ん坊の泣き声がした。何者かが赤子を捨てていったのだ。下人は迷わずに赤ん坊をくるんでいた着物を奪い取ると、赤ん坊は放置する。あまりの所業に杣売りは咎めるが、下人は自らの理を解き、さらに現場から無くなっていた金沢の太刀と短刀を盗んだのが杣売りだったと指摘し、お前に非難する資格はないと言ってその場を去る。

旅法師は思わぬことの成り行きに、世をはかなんでしまう。と、杣売りが「自分の子として育てる」と、赤子を大事そうにかかえて引き取っていった。旅法師は、まだ人間は捨てたものじゃないと希望を見出すのだった。

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